はーい。こんにちわー。
元気堂です。
中年期つまり40歳から64歳の25年間・そこからの老年初期において、大量飲酒により骨格筋量が減少するリスクが増加する可能性があることが判明しました。
これは、英イースト・アングリア大学(UEA)ノリッジ医学部教授のAilsa Welch氏らによる研究によるものとなります。
加齢に伴う骨格筋量の減少は、皆さんは周知のことかと思います。
そのため、予防として運動を取り入れる方も多いでしょう。しかし、加齢という原因だけでなく、そこに飲酒が加わる事でより筋肉の健康についてどう影響が出るのかは、あまり知られてはいませんでした。
今回の研究の概要とは??
■ UKバイオバンク参加者の中から本研究の適格基準を満たした19万6,561人(37〜73歳、男性8万8,116人、女性10万8,445人)を対象
■ アルコールの摂取量・サルコペニア(筋肉量の減少に伴って、筋力や身体機能が低下している状態)・体格によるFFM( 体水分量+蛋白質量+ミネラル量であり、実質の臓器と筋肉量と高い相関を認める指標)の違い・喫煙状況・身体活動量などについても考慮
その結果とは、いかに・・・。
骨格筋量とFFM%(体重に占めるFFMの割合)の値が最もピークになったのは、中等度の量のアルコール摂取である事が判明。
■ 男性では、骨格筋量のピークになったのはアルコール量6.8g/日・FFM%のピークになったのはアルコール量4.8g/日
■ 女性では、骨格筋量のピークになったのはアルコール量14.7g/日・FFM%のピークになったのはアルコール量13.5g/日
通常、純アルコール量は、アルコールの比重も考慮して以下の計算式で算出します。
お酒の量(ml) × アルコール度数/100 ×0.8(アルコールの比重)= 純アルコール量(g)で計算されます。
例えば、アルコール度数5%のビール缶1本(350ml)に含まれる純アルコール量を計算してみましょう。
350ml × 5/100(=5%) × 0.8 =14gとなります。
つまり、男性では缶ビール半分・女性では1缶くらいとなります。これぐらいの飲酒であれば、筋肉量が向上することが判明しました。しかし、これ以上飲んでしまうと低下する一途となるようです。
アルコールを摂取しない場合と比較すると、どのようになるのか?? 少し気になる所でしょう。
■ 男性では、アルコール量48g/日の摂取でそれぞれ0.23%、0.47%の低下。アルコール量80g/日の摂取で1.34%、1.55%の低下、アルコール量160g/日の摂取で3.59%、3.64%の低下。
■ 女性では、アルコール量80g/日の摂取でそれぞれ0.57%、1.10%の低下。アルコール量160g/日の摂取で4.92%、6.10%の低下。
アルコール量が増えることで、どんどん低下していくことが分かりますね。
しかし、握力の強さだけは、アルコールの摂取量が増えるほど増強することが判明!!
この研究に参加した多くの50〜60歳代において、体格などの要因を考慮しても、アルコールを大量に飲む人は、あまり飲まない人に比べて骨格筋量が少ないことが判明。
今回の研究において分かった点は、アルコールの飲み過ぎは骨格筋量の維持にも影響がでるという事です。
骨格筋は、人体を動かすためには重要な筋肉で、体を動かしたり姿勢を保ったりする際に使われます。そのため、弱る事で動きが緩慢になり転倒リスクが増えたり、腰が曲がってしまうなどの症状をもたらします。
今回の事から学ぶべきは、加齢に伴い骨格筋が弱くなるのは分かっているので、運動するだけでなくお酒の量も考えていく事が大切となります。
東洋医学では、筋肉は肝が関与している!!
五行説では、【肝は筋を主どる】と言われます。
つまり、普段の動きなどは肝が正常であれば動くことを指します。肝に何らかの影響が出ることで、手足の痺れ・振るえ・ピクピク動いたり痙攣・倦怠感などの症状を生じます。
これは、筋肉の栄養である血(肝血・肝に貯蔵された血液)が不足することで起こります。
今回に研究において、アルコールと筋肉に深い関わりがある事が分かりました。
アルコールを多く摂取するほど、肝は解毒するために多くのエネルギーを消耗し、疲労が蓄積していくことがイメージできるでしょう。
これでは、溜めていた肝血が枯渇してしまうので、当然のように筋肉も低下してしまいます。
東洋医学の考えでは、想像できる結果でもあるかもしれませんね。
お酒好きには、肝を滋養する事が大切!
肝を元気にするには、五味である酸っぱい食材・酸味などがオススメです。
酸味というのは、肝のカテゴリーに属しており、これを摂取する事で肝を滋養します。例えば、梅・すもも・レモンなど。
また、春の食材は基本的に肝はよく、とくに青い食材である青魚・青野菜などがオススメですね。
また、肝はストレスに弱い特徴があるので、伸び伸びとリラックスする事が重要です。そうすることで、肝の疏泄作用が回復していくことでしょう。
その他にも、漢方薬であれば、逍遥散・加味逍遥散・抑肝散陳皮半夏・釣藤散など肝を滋養したり、肝が関与する症状をを改善するようなものも取り入れると良いでしょう。
また、お酒好きであれば解毒を促すことで、肝を助ける事も良いかと思います。そのような場合だと、牛黄・一貫堂の龍胆瀉肝湯・茵陳五苓散なども使われます。
■ 逍遥散
肝を滋養する基本的な漢方薬です。
抗ストレス作用がある柴胡+芍薬の組み合わせ・補血(肝へ栄養となる物質)になる当帰・芍薬の配合が全身へ栄養します。女性であれば、月経の異常にも良く、PMSにもオススメです。その他の生薬も脾胃を整えてくれます。
ちなみに、逍遙という言葉は気ままに歩くなどの意味があります。悠々自適でストレスを溜めないための薬という意味でもあります。
■ 一貫堂の龍胆瀉肝湯
この処方は、温清飲+一般的な龍胆瀉肝湯で作る事が出来ます。
つまり、温清飲の補血作用・清熱作用が加わる事で、肝を滋養しつつ肝の炎症を鎮める働きを追加しています。
一般的な龍胆瀉肝湯は、清熱解毒という役割である熱を抑え利尿作用で体外へ炎症を追い出す働きを持ちます。そのため、尿道炎・頻尿などの下部泌尿器科疾患に使われるイメージがあるでしょう。
お酒により、肝の解毒を促すためには利尿作用が必要であり、また基本的には身体に熱が籠もるのでアルコールによる解毒には龍胆瀉肝湯はオススメです。
一貫堂の龍胆瀉肝湯には、肝の解毒に作用にも滋養作用にも働くので、肝を滋養したい場合には試してみると良いでしょう。
まとめ
中年期になったら、過度のお酒は控えることが大切ですね。
また、将来のために運動を取り入れて行きましょう。
なかなか生活改善が難しい方は、漢方薬を試してみると良いでしょう。
以上、参考になれば幸いです。
参考文献:「Calcified Tissue International」に5月25日掲載